朝は珈琲を淹れる。最近そろえたミルやドリッパーを活躍させたいがため。豆を挽いたときの香りのために淹れているともいえる。珈琲に含まれる神経の興奮作用をなるだけ摂取しないようにと思っているが、香りのために豆を挽くと珈琲を飲まざるを得ない。挽いた分だけ淹れるので2杯分をいれる。本当にそれで楽しんでいるのかと思ってしまうが、これでも楽しんでいる。体への影響との天秤にかけているだけで。その行動は自分に宣言しているだけで、もしかしたら珈琲を飲みたくて行っているわけではないのかもしれない。宣言とはすなわち、毎朝豆を挽いて珈琲を淹れる余裕があるということを自分の意識に神経に生活に宣言している。ほおっておくとどんな贅沢も当たり前になると別の不満足を探してくるようになる、そうなっている。だから宣言して思い出させる。すでに自分のものとなった余裕を。
あなた呼吸していないわ
呼吸?息しているよ
いいえ、しているとは言えない。表の世界での呼吸は意味を失ってしまったわ
表の世界って?
これがわたし?
唯の姿は成長していた。
母の見せてくれた学校案内パンフレットで笑う女子学生と同じ制服を着ている。サイナンカンコウだと母は言っていた。最難関校、とってもむずかしいけれどいいところ、唯はここが合うと思うのよと母は言っていた。
これは未来の私の姿?
いいえ
ただ、あなたの自意識はあなたをそうおもっているみたいね。
女はほめているわけではなさそうだった。
裏の世界では何でもできる、自分が思う自分の姿になるの。自分が願う姿にはならないわ。もし自分の願う姿になりたいならそのためには隅々まで自分の身体に意識をめぐらせて。足の爪先から、頭の天頂まで。あなたという体の隅々をとおる血管の巡りを感じる。呼吸をして空気が入り、血に乗って運ばれるのを感じるのよ。
呼吸が出来ればなんだってできる。
歌うように女性は言った。実際、歌っていた。小川を流れる水を足先でつつき、小岩と小岩の間を飛び跳ねた。
イトをめぐらすのよ
糸?
いいえ、あなたの意志、意図よ。
心を守るために、
閉じる、信用しない、本音を言わない、口を開かない、
それをするのは卑怯だろうか。
卑怯ではないが怠惰ではある、といわれた。
強者がそれをするのは怠惰、
弱者側のそれは防御
対話は強者からするべきだが、強者は強者故に気づかない、だから弱者は理性をもって声を上げる
声を上げたという事実があるのが大事
さいさんの奏上をしていること、それを外側から見えるようにすること。
道理があってもなくとも、人は怒っている者を味方しない。怒りに任せて怒鳴り散らす者は対話の場から退場させられている。
感情には理屈を
理屈には感情を
怒髮上衝冠(怒髪上りて冠を衝く=怒りで髪が上に向かって冠を押し上げる)」

